リネン生地とは?麻との違いは?特徴について詳しく解説していきます
リネンは吸水性や速乾性に優れており、肌触りもよいことから、人気の高い素材のひとつです。しかし、そもそもリネンがどのような生地なのか、また、リネンと同じく天然素材として有名な「麻」との違いがあるのか、基本的な情報を知らない方も少なくありません。
この記事では、リネン生地の特徴や、リネンを扱うポイントについて詳しく解説します。
目次
●リネン生地とは
●リネン生地の歴史
●リネン生地の種類
・アイリッシュリネン
・フレンチリネン
・コットンリネン
・ストレッチリネン
●リネンと麻の違い
●リネン糸の番手とは
●リネンの特徴
・吸水性に優れている
・速乾性にも優れている
・肌触りがよい
・汚れにくく抗菌性も期待できる
・ダメージに強い
・高温だと縮むことがある
・洗濯や直射日光で色が変わる
・洗濯よって品質が変わる場合もある
●リネン生地を扱うポイント
・洗濯機ではネットに入れる
・洗剤は「中性洗剤」を使う
・手洗い時は30℃以下のぬるま湯を使う
・「濡れ干し」か「平干し」で乾かす
・アイロンは洗濯表示を確認してからかける
●リネンは優秀な天然素材生地
William Morris's Daisy (1864) famous pattern.
Public Domain Free CC0 Image
リネン生地とは?
リネン生地は、天然繊維の1種です。亜麻(あま)の一種である「フラックス」から作られる植物繊維で、「リネン」という名前は英語の「linen」に由来します。(フランス語では「リンネル(linière)」です)
フラックスはフランスなど気温の低いヨーロッパで栽培されていますが、日本でも北海道地方で栽培されています。フラックスは生育が良く、肥料や除草剤が無くても栽培しやすいことが特徴です。環境に優しい植物としても注目されています。
リネン生地のメリット
人類最古の繊維がリネンで、今から1万年前の紀元前8000年頃から使われているといわれています。人類最古の文明であるメソポタミア文明が栄えたユーフラテス川・チグリス川周辺で使われはじめました。
エジプト文明では交易品としてリネンが取引され、盛んに使用されるようになります。エジプトのミイラを包んでいる布もリネンです。
その後、古代ヨーロッパから中世〜現代に至るまで、さまざまな文明でリネン生地は使われてきました。
なお、日本では「リネン」が寝具を表す言葉としても使われていますが、必ずしも全ての寝具がリネンから作られている訳ではありません。
しかし「布といえばリネン」という代名詞として使われるほど、日本国内でも盛んに使われていました。
リネン生地の種類
リネンには産地や混紡素材によっていくつか種類が分けられています。英国アイルランドの亜麻から作られたリネンは「アイリッシュリネン」、フランス産の亜麻から作られたリネンは「フレンチリネン」です。また、コットンとリネンの混紡生地は「コットンリネン」、ポリウレタンとリネンの混紡生地は「ストレッチリネン」と呼ばれています。
- アイリッシュリネン
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アイリッシュリネンは繊維が細く、光沢感がある生地が特徴です。肌触りがなめらかで、リネンの中でも最高品質といわれています。しかし、現在のアイリッシュリネンのほとんどの原料は、アイルランド以外の国々が産地です。そのため、アイルランド(イギリス)で織られたリネン生地も、アイリッシュリネンと呼ばれています。
- フレンチリネン
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フレンチリネンは「フラックス」の一大産地であるフランス産の原料から作られたリネン生地です。(フラックスはフランス北部フランドル地方やベルギーで盛んに栽培されています)上質なフレンチリネンは透けにくく、肌触りがよいといわれています。その特徴を活かし、ブラウス、ワンピース、下着などさまざまな衣類に使われていることが特徴です。
また、リネンは麻布などと比べるとしなやかな肌触りであることも特徴です。しなやかさは「ペクチン」という成分に由来し、リネン独特の触り心地を生み出しています。
- コットンリネン
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コットンリネンはコットンとリネンの混紡生地で、リネンの通気性とコットンの吸水性を併せ持つことが特徴です。通気性と吸水性の良さから、赤ちゃんの肌着として利用されています。また、純粋なリネンよりも洗濯に強いため、使い勝手がよいことも特徴です。
また、リネン繊維そのものにも抗菌性があるため、雑菌が繁殖しづらい効果もあります。
- ストレッチリネン
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ストレッチリネンはポリウレタンとリネンの混紡生地で、本来は伸縮性の悪いリネンの弱点を、ポリウレタンの伸縮性がカバーしています。動きやすさが重視されるボトムスなどに使われることが多いです。
リネンと麻の違い
リネンと麻は違う生地であると思っている方もいるかもしれません。しかし、リネンは亜麻の一種であると紹介したとおり、リネンとは麻の種類名称です。
一般的に使われる言葉としては、次のような違いがあります。
- ●リネン:亜麻繊維を原料にした生地の総称
- ●麻:植物繊維の総称
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麻は植物繊維の総称なので、リネン以外にもジュート(黄麻)、ケナフ(洋麻)、ヘンプ(大麻)、ラミー(苧麻・ちょま)、マニラ麻(アバカ)、サイザル麻(ヘネケン)などが含まれます。
ただし、家庭用品品質表示法という法律で、衣服などの素材として「麻」表示が許可されている繊維は「リネン」「ラミー」の2種類のみです。そのため、ジュートやヘンプなど他の麻繊維は単純に「植物繊維」と表示されます。
なお、リネンやラミーは衣服やタオルなどの日用品に多く使われることが特徴で、ジュートは麻袋やカーペット、ヘンプはロープなどに使用されることが多いです。また、リネンは比較的柔らかい素材であるのに対し、ラミーはコシがある素材といわれています。
リネン糸の番手とは
リネン糸の「番手」が記載されている生地を目にすることも多いかもしれません。リネン糸の番手とは糸の太さを表す番号で、番号が小さいほど糸が太く、番号が大きければ糸は細いです。
つまり、番号が小さい(糸が太い)と生地は厚くなり、反対に番号が大きい(糸が細い)と生地が薄くなります。(ただし、厳密には、織り方、織っている糸本数、生地の加工方法などで厚さはことなります)一般的なリネン糸の番手は25番手、40番手、60番手が多いです。
リネンの特徴
リネン生地の特徴としては、メリット・デメリットを合わせて次の8つが挙げられます。
- ●吸水性に優れている
- ●速乾性にも優れている
- ●肌触りがよい
- ●汚れにくく抗菌性も期待できる
- ●ダメージに強い
- ●高温だと縮むことがある
- ●洗濯や直射日光で色が変わる
- ●洗濯よって品質が変わる場合もある
リネンを扱う際は、これらの特徴を意識したほうが長く品質を保って使用できます。それぞれの詳細は次のとおりです
- 吸水性に優れている
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リネンは吸水性に優れていることが特徴です。同じ植物繊維の「綿」と比較しても、リネンのほうが4倍程度優れています。汗を素早く吸水してくれるため、夏用の衣服や寝具にオススメです。
- 速乾性にも優れている
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リネンは速乾性にも優れています。汗をかいた時でも素早く乾いてくれるため、快適な着心地が続くことが特徴です。なお、リネンが速乾性に優れているのは、繊維内部が空洞のためです。
- 肌触りがよい
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リネン生地は肌触りがよいことも特徴です。なめらかな肌触りで刺激が少ないことから、肌に触れてチクチクしません。さらに、リネンは麻布と比べるとしなやかです。しなやかさはリネンの繊維をコーティングしている「ペクチン」という成分のおかげといわれています。
- 汚れにくく抗菌性も期待できる
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リネンの肌触りを生み出している「ペクチン」は汚れが繊維に染み込むことを防いでくれることも特徴です。また、リネン繊維には植物繊維ならではの天然の抗菌性があるといわれています。
- ダメージに強い
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リネンはエジプトのミイラにも使われているように、ダメージに強いことも特徴です。水にぬれると丈夫さが増す特徴もあるので、洗いながら長く使用すればするほど強度が増していきます。ただし、洗濯機の使用ができないリネンの服もあるので、洗濯表示は確認してください。
- 高温だと縮むことがある
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リネンは丈夫な生地ですが、高温状態に晒されると縮んでしまいます。30℃以上のお湯でも縮んでしまう生地もあるので、手洗い・洗濯機いずれの場合も水温には気をつけましょう。
- 洗濯や直射日光で色が変わる
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洗濯や直射日光で変色してしまうことも、リネン生地の特性です。リネン生地を守っている「ペクチン」によって、リネン生地を着色する染料が繊維に入りづらいため、洗濯によって色移り・色落ちしやすいといわれています。白い衣服を一緒に洗濯機に入れると簡単に色移りしてしまうため、着色されているリネン生地は単体で洗濯しましょう。
また、丈夫といわれているリネン生地ですが、紫外線・直射日光には弱いです。洗濯後に日当たりのよい場所で乾かしてしまうと変色してしまうので、できるだけ日陰もしくは室内で干しましょう。 - 洗濯よって品質が変わる場合もある
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リネン生地は洗濯によって品質が変わってしまうこともあります。リネン生地に限らず、麻や綿などの天然素材は水洗いによって生地が詰まるため、多少の縮みは避けられません。また、大量の衣類とリネン生地を同時に洗濯した場合、衣類同士の摩擦で生地が傷んでしまうこともあります。リネン生地の衣類を洗濯する際は、洗濯表示を確認し、適切に扱いましょう。
リネン生地を扱うポイント
リネン生地は丈夫な生地ですが、洗い方や乾かし方によっては傷んでしまうことも少なくありません。ここまで紹介したリネン生地の特徴を踏まえて、リネンを扱う際は次のポイントに気をつけましょう。
- 洗濯機ではネットに入れる
- 洗剤は「中性洗剤」を使う
- 手洗い時は30℃以下のぬるま湯を使う
- 「濡れ干し」か「平干し」で乾かす
- アイロンは洗濯表示を確認してからかける
それぞれの詳細は次のとおりです。
- 洗濯機ではネットに入れる
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リネン生地を洗濯機で洗う際は、洗濯ネットに入れて洗いましょう。ネットに入れて洗うことで他の衣類との摩擦も避けられ、縮むことも防げます。
もし汚れが目立つ場合は、汚れ部分が外側になるように畳んで入れてください。なお、先述したとおり、リネン生地は濡れることで強度が増す性質を持っています。そのため、ことさらに洗濯を避ける必要はありません。
- 洗剤は「中性洗剤」を使う
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リネン生地を洗う際は、中性洗剤を使いましょう。可能であれば「オシャレ着用」の洗剤を使うことをオススメします。中性洗剤はアルカリ性洗剤よりも生地に与えるダメージが少なく、色落ちしづらいため、リネン生地の特徴に最適です。なお、購入後はじめての洗濯の場合は、他の衣服に色移りする可能性があります。色移りを防ぐために、購入後2~3回程度は単体で洗ったほうが安心です。
- 手洗い時は30℃以下のぬるま湯を使う
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リネン生地を手洗いする場合は、30℃以下のぬるま湯を使いましょう。水に濡れると縮むリネン生地は、高温だとより一層縮みやすいです。30℃以下のぬるま湯で丁寧に押し洗いしながら、何度か水を替えて濯いでください。
- 「濡れ干し」か「平干し」で乾かす
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洗い終わったリネン生地は、「濡れ干し」か「平干し」で乾かしましょう。リネン生地の特徴で紹介したとおり、紫外線・直射日光で乾かすと変色してしまいます。また、乾燥機は縮みの原因なので、「濡れ干し」か「平干し」で自然乾燥させます。
「濡れ干し」は、水が滴る程度の状態でハンガーに吊るして乾かす方法です。水の重みでシワが伸びるため、洗濯後のシワを防ぐ効果も期待できます。リネンは洗濯後に置きっぱなしにしておくとシワになりなりやすいため、すぐに濡れ干しするようにしましょう。
「平干し」は、平台や専用ネットを使って平らに広げて乾かす方法です。平干しすれば型崩れを防ぐことができます。
- アイロンは洗濯表示を確認してからかける
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リネンはシワになりやすいため、アイロンをかけたいという方もいるかもしれません。しかし、リネン生地にアイロンをかける場合は、洗濯表示を確認してからにしましょう。リネン生地は高温に弱いため、霧吹きで湿らせながら、あて布も使うことをオススメします。
- リネンは優秀な天然素材生地
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リネンは吸水性・速乾性・肌触りに優れた素材で、衣服をはじめ雑貨、カーテンなどさまざまな用途で使われています。汚れに強く丈夫な生地なので、長く楽しめることも特徴です。しかし、直射日光や紫外線には弱く、洗い方を間違えると簡単に傷んでしまう場合もあります。
リネン生地を洗う際は摩擦や使用する洗剤、干し方に注意し、シワにならないように手入れしましょう。洗濯ネットに入れて中性洗剤で洗い、濡れ干しすればシワにならずに保管できます。