撥水加工は効果あり?
クリーニング歴75年の老舗が効果・持続時間について話します
Paris Street Rainy Day (1877) Gustave Caillebotte
Public Domain Free CC0 Image
雨のシーズンに入る前に、撥水加工を検討している方も多いのではないでしょうか。撥水加工は雨や雪のみならず、泥はねや油汚れからも衣服を守ってくれることが特徴です。しかし、撥水効果はずっと続くわけではなく、定期的にクリーニングに出す必要があります。 この記事では、撥水加工の効果や持続時間について解説します。
目次
●クリーニングの撥水加工とは?
●撥水加工と防水スプレーは何が違う?
●撥水加工の効果・メリット
・衣類が濡れにくい
・泥はねや食べこぼしなどで汚れづらい
・生地が長持ちしやすい
・縮みやシワ、カビも防ぐ
●撥水加工のデメリット
・水を完全に防ぐわけではない
・効果は一定期間に限られる
●撥水加工の持続時間
●撥水加工したほうがいい衣服
●撥水加工は避けたほうがいい衣服
●クリーニングにおける撥水加工料金
●水や汚れから守りたい服にはクリーニングの撥水加工がオススメ
クリーニングの撥水加工とは?
クリーニングにおける撥水加工とは、その名のとおり「水をはじく」成分を繊維(生地)にコーティングすることを指します。撥水加工された生地の上で水が玉状にはじかれているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
撥水加工のコーティング剤としては、フッ素系樹脂やシリコン系樹脂が一般的です。これらの撥水加工成分は水分子より小さいため、生地表面から水が侵入することを防いでくれます。
ただし、撥水加工成分は繊維の周りをコーティングするだけで、繊維の隙間を完全に塞ぐわけではありません。そのため繊維間を完全に塞ぐ「防水加工」と異なり、「撥水加工」を施した衣服は空気や熱は通します。そのため、撥水加工は水をはじきつつも通気性は保つことが特徴です。
なお、撥水加工はあくまでも「水をはじく」加工なので、極端に濡れる土砂降りの場合や、霧雨のような小さな水滴には弱いともいわれています。完全に水を防ぎたい場合は、「防水加工」が必要です。防水加工の場合はパラフィンなどの防水加工成分で繊維間の隙間を無くし、水の侵入を防ぎます。
撥水加工と防水スプレーは何が違う?
撥水加工と防水スプレーの違いは2つあります。
1つ目の違いは通気性です。先述したとおり、撥水加工では空気を通しますが、防水加工は空気を通しません。そのため、防水スプレーで水対策をした場合、衣服の中が汗や熱で蒸れることが多いです。撥水加工は通気性を保ったまま衣服を水から守ってくれるため、アウトドア用衣類や通勤通学用のアウターで重宝されています。
2つ目の違いは「ムラ」です。市販品の防水スプレーで水対策をすると、どうしてもスプレーの「ムラ」が生まれてしまいます。そのため「ムラ」部分から水が侵入してしまうこともあるでしょう。一方クリーニング店が行う撥水加工は、「ムラ」なく施されるよう対策されているため、水対策として安心できます。
また、市販品の「撥水スプレー」もありますが、クリーニングの撥水加工で使用する撥水剤よりも粒子が粗い傾向です。クリーニングの撥水剤のほうが粒子は細かく衣服の隅々まで浸透しやすいため、高い撥水効果が期待できます。
また、撥水効果の持続時間も、市販品の撥水スプレーは短い傾向にあります。市販品の撥水スプレーのほうがクリーニングの撥水加工より安いですが、撥水効果を求める場合はクリーニングに出すことをオススメします。
撥水加工の効果・メリット
撥水加工の効果・メリットとしては、次の4点が挙げられます。
- ●衣類が濡れにくい
- ●泥はねや食べこぼしなどで汚れづらい
- ●生地が長持ちしやすい
- ●縮みやシワ、カビも防ぐ
それぞれの詳細は次のとおりです。
- 衣類が濡れにくい
-
撥水加工を施せば、当然衣類が濡れにくくなります。また、防水加工と違って通気性が保たれるため、コートやスーツに施しても蒸れにくいことが特徴です。
- 泥はねや食べこぼしなどで汚れづらい
-
撥水加工を施せば、泥はねや食べこぼしなどからも衣類を守ってくれます。泥はねが付着しても生地表面ではじかれるため、手入れが簡単です。また、撥水加工は油汚れもはじいてくれるため、シミ抜きも不要です。
- 生地が長持ちしやすい
-
水や汚れから守ることで、生地が長持ちしやすくなることも撥水加工のメリットです。長持ちさせたい衣服にこそ、撥水加工を施すべきといえます。
- 縮みやシワ、カビも防ぐ
-
撥水加工を施せば縮みやシワ、カビも防いでくれることもメリットです。撥水加工を施せば衣服が汚れにくくなるため、衣類が縮んだりシワになったりする原因となる洗濯回数が減ります。また、撥水加工は通気性を保ってくれ、油汚れなども防いでくれるため、カビ防止の効果が期待できることも特徴です。
撥水加工のデメリット
撥水加工のデメリットとしては、次の2つが挙げられます。
- 水を完全に防ぐわけではない
- 効果は一定期間に限られる
それぞれの詳細と対策は次のとおりです。
- 水を完全に防ぐわけではない
撥水加工はあくまでも水をはじくことが目的です。そのため、水の浸透を完全に防ぐわけではありません。防水加工よりは水に弱いことは、撥水加工のデメリットといえます。
- 効果は一定期間に限られる
撥水加工の効果は一定期間に限られます。そのため、効果が途切れる前に再度クリーニングに出さなければなりません。
- 撥水加工の持続時間
撥水加工の持続時間は、衣服を着用する頻度や洗濯する頻度によって異なります。たとえばスキーウェアなど、1週間〜1か月に1度しか着ないような衣服であれば、防水加工の効果は1シーズン持続します。
一方、スーツなど1週間に何回も着る衣服や、洗濯回数が多いワンピースなどの撥水効果は、1か月〜1か月半程度で薄れる場合も多いです。
撥水加工したほうがいい衣服
撥水加工したほうがいい衣服としては、次のような種類が挙げられます。
- ●ダウン・コートなどのアウター
- ●スキーウェア・スノボウェア
- ●合羽・レインコート
ダウンやコートなど、通勤・通学で使うアウターは、撥水加工によって雨や湿気に強くなります。また、通気性を保ったまま汗汚れから生地を守れるので、衣服が長持ちすることもポイントです。特に高級なアウターの場合は、撥水加工をオススメします。
また、スキーウェア・スノボウェアなど雪に触れる衣服も、撥水加工をしておいたほうがよいです。これらの服は運動時に使うため、防水加工だと通気性が妨げられ、蒸してしまう場合もあります。撥水加工で水は防ぎつつ、空気は通るようにしておきましょう。
合羽やレインコートなどの雨具も、撥水加工がオススメです。これらの雨具は使用すればするほど、水が浸み込みやすくなります。新しい雨具を買う前に、撥水加工を試してみてください。
撥水加工は避けたほうがいい衣服
撥水加工は避けたほうがいい衣服としては、次のような種類が挙げられます。
- ●合成皮革
- ●ニット・セーター
- ●肌に触れる衣服
塩ビやポリウレタンなどの合成皮革は、素材に元々撥水効果があります。そのため、わざわざクリーニングで撥水加工をする必要はありません。また、ニットやセーターは撥水加工によって生地の風合いが損なわれる場合があります。ワイシャツやTシャツ、ブラウスなど直接肌に触れる衣服に撥水加工してしまうと、汗を吸水しなくなってしまいます。そのため、撥水加工には向いていません。
クリーニングにおける撥水加工料金
水や汚れから守りたい服にはクリーニングの撥水加工がオススメ
撥水加工は雨や雪などの水だけでなく、泥汚れや油汚れからも生地を守る効果が期待できます。そのため、アウターやアウトドア衣類はもちろん、長持ちさせたい衣類にも撥水加工はオススメです。
なお、撥水加工はあくまでも水をはじくことが目的なので、防水加工のように水を完全に防ぐ効果はありません。しかし、繊維の通気性は確保されるため、快適な着心地を保てることが特徴です。
また、撥水加工は市販品のスプレーでも行えますが、クリーニングの撥水加工ほどの効果は見込めません。撥水効果を求める場合は、クリーニングに出すことをオススメします。ダウン・コートなどのアウター、スキーウェア・スノボウェア、合羽・レインコートなどは撥水加工がとくにオススメの衣類です。ぜひ一度、クリーニングで撥水加工をお試しください。